休業手当の課税関係について
2020.06.26
税務トピックス
その他
新型コロナウイルス感染症の影響によって、「はじめて従業員に休業手当を支給した!」という会社も多いのではないでしょうか。
休業手当とは、労働基準法に定められた手当です。
労働基準法では、「使用者の責に帰すべき事由」によって従業員を休業させた場合、その平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことが義務付けられています。(同法第26条)
既に休業手当を支払っている方はご存知と思いますが、新型コロナウイルス感染症のために営業を自粛等し、それに伴い従業員を休業させた場合は、この規定によって、従業員に休業手当を支払わなければならない場合があります。
この負担を補ってくれるのが、国からの「雇用調整助成金」であり、現在は、新型コロナウイルス感染症の特例措置として通常よりも支給要件が緩和されています。
新型コロナウイルス感染症の影響で従業員を休業させることが、「使用者の責に帰すべき事由」にあたるかどうかは、ケースバイケースです。
判断の一つの目安として、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(令和2年5月29日時点版)の回答文があります。
これによると「不可抗力による休業」の場合は、休業手当の支払い義務は無いとされ、「不可抗力」については、
・その原因が事業の外部より発生した事故であること
・事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
以上の2つを満たすものとされています。
例として、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合に、これを十分検討することなく休業させた場合などは「使用者の責に帰すべき事由」にあたる可能性があることが示されています。
休業手当の支給に迷ったときは、労働基準監督署や社会保険労務士など専門家にご相談ください。
さて、前項のルールによって休業手当を支払った場合、会社側は
・給与課税の対象になるか
・源泉徴収の対象になるか
という税務の面にも注意が必要です。
法律上のルールで支払っている手当とはいえ、休業手当は、給与課税の対象(=所得税の対象)になります。
給与台帳にはもちろん載せなければなりませんし、年末調整の対象にもなります。
給与として扱われますので、源泉徴収の対象にもなります。
休業手当と似たものに「休業補償」があります。
「休業補償」は、労働基準法によって会社から従業員に平均賃金の60%を支払うことを義務付けるものですが、こちらは「業務上の負傷や疾病」のために働けないときの補償です。(労働基準法第75条、76条)
補償という性質から、給与課税の対象にはなりません。
前述の「休業手当」と似ていますが、税務上の扱いは正反対ですので混同しないように注意してください。
なお、従業員が新型コロナウイルスに感染したことが業務に起因するときは、労災保険の対象になります。 労災保険の対象となる場合、休業補償の支払いは不要です。