資金援助による住宅の取得
2021.08.27
税務トピックス
その他
自身の住宅取得にあてるため、親や祖父母から、資金援助を受けたとき、一定額まで非課税となる特例があります。
「直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税特例」と呼ばれるものです。
特例の概要
「直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税特例」(以下、「特例」)の対象は、平成27年1月1日から令和3年12月31日までの間に、直系尊属から、住宅取得等資金の贈与を受けた場合に、一定額まで非課税にできる特例です。
直系尊属とは、自分の血族(血の繋がった家族)のうち、自分よりも上の世代の人をいいます。
したがって、姻族(配偶者の親など)からの贈与は対象になりませんし、子から親、兄から弟への贈与なども対象になりません。
特例の主な要件
・贈与を受ける人が、贈与年の1月1日時点で20歳以上であり、かつ、贈与を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
・住宅の取得等(新築、中古や未使用住宅の購入、一定の増改築)の費用に充てること
・贈与を受けた翌年3月15日までに、贈与された資金を使って住宅の取得等をすること
・贈与を受けた翌年3月15日までに入居すること(遅滞なくその家屋に居住することが確実であると認められる場合は、翌年12月31まで)
・必要書類を添付して、贈与税の確定申告をすること(納税額が0円でも必要)
など
他にも詳細な要件があります。
詳しくは税務署や税理士にお尋ねください。
床面積の改正
特例では、取得する住宅の床面積について、50㎡以上240㎡未満という要件があります。
床面積は、家屋の登記簿から判定を行います。
増改築の場合は、増改築をした後の床面積で判定します。
なお、床面積の下限については改正が行われ、令和3年1月1日以降の贈与では「40㎡以上」の住宅にも適用できます。
ただし、贈与を受ける人の合計所得金額が1,000万円以下のときに限られます。
もともと特例を受けられるのは、合計所得金額が2,000万円以下の人ですから、令和3年中の贈与における床面積と合計所得金額の要件の関係は、次のようになります。
・40㎡以上50㎡未満・・・合計所得金額1,000万円以下
・50㎡以上240㎡未満・・・合計所得金額2,000万円以下
新型コロナによる期限の延長
新型コロナウイルスの影響など「災害に基因するやむを得ない事情」によって、期限までに住宅の取得等(新築、中古や未使用住宅の購入、一定の増改築)ができなかった場合や入居できなかった場合は、それぞれの期限が1年間延長されます。(租税特別措置法70条の2第10項、第11項)
翌年3月15日が期限であれば「翌々年3月15日」に、翌年12月31日が期限であれば「翌々年12月31日」になるということです。
国税庁では、新型コロナウイルス関係で「災害に基因するやむを得ない事情」にあたる場合の例として、“緊急事態宣言などによる感染拡大防止の取組に伴う工期の見直し、資機材等の調達が困難なことや感染者の発生などにより工事が施行できず工期が延長される場合など、新型コロナウイルス感染症の影響により生じた自己の責めに帰さない事由”が該当するとしています。
(引用)国税庁:新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係」(問13)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/04.htm#q4-13
特例の注意点
特例によって非課税になる金額には、上限があります。
上限額は、贈与をした年ごとに確認が必要で、令和3年中の贈与であれば、
・省エネ等住宅 1,500万円
・それ以外の住宅 1,000万円
となります。(支払った対価に適用される消費税の税率が、10%である場合)
そして、非課税額を超える分についてどうするかは、以下の対応が考えられます。
・自分の預貯金等から支払う
・自分で住宅ローンを組んで返済する
・超える分も贈与を受けて、暦年贈与で贈与税を納税する(110万円の基礎控除あり)
・超える分も贈与を受けて、相続時精算課税を選択して、さらにもう2,500万円分の贈与を非課税とする(→相続税の支払いで精算することになります)
注意が必要なのは、住宅ローンを組むときです。
住宅ローン控除の要件(10年以上の返済期間があるなど)を満たせば、特例と併用することができるのですが、住宅ローン控除の計算で、ある調整が必要となります。
まず、住宅ローン控除の対象となるのは、住宅の取得等の対価が上限です。
たとえば、住宅ローンを4,000万円組んでいても、住宅の取得等の対価と認められる額が3,000万円であれば、住宅ローン控除は3,000万円から、住宅の種類等に応じて計算しなければなりません。
このとき、さらに親から1,000万円の贈与を非課税で受けている場合、3,000万円からさらに1,000万円を控除した、残りの2,000万円が住宅ローン控除の計算対象になります。
誤りやすいので注意が必要です。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/17/08.htm