助成金の受領と消費税の返還
2021.08.13
税務トピックス
その他
助成金とは?
助成金とは、国や地方公共団体から、事業者のさまざまな取り組みに対して
支給される公的な支援金です。
事業者が受給した助成金は、目的外使用などの違反でもない限り、返還する必要はありません。
ただし、受給額の一部に、消費税の「仕入控除税額」にあたる金額が含まれていると、
その金額に対応する助成金を返還しなければならないことがあります。
消費税の返還が必要となる理由
助成金は、事業者の収入として、「法人税」や「所得税」の課税対象になります。
受給したのが法人なら法人税、個人事業主なら所得税(事業所得など)ということです。
これに対して、「消費税」については、「不課税」となります。
なぜなら、助成金の支給・受給が、物やサービスを売る・買うのような、
対価性のある取引(=課税取引)にあたらないからです。
ところが、助成金の対象になる支払いには、物品の購入費や専門業者に支払うサービスの利用料金など、消費税の課税対象にあたるものがあります。
そうすると、助成金を受給した事業者が、消費税の確定申告をするとき、その際に算出した
「仕入控除税額」に、助成金の一部が含まれることがあります。
これが、助成金を返還することになる原因です。
仕入控除税額とは
「仕入控除税額」とは、消費税の課税事業者が、課税仕入(=課税取引にあたる支払い)において支払った消費税から計算される、消費税の控除額です。
たとえば、その年に受け取った消費税が100円、仕入控除税額が80円であれば、「100円-80円」で差額の20円を納税します。
なお、支払った消費税の全額が仕入控除税額になる場合と、そうでない場合があります。
これは、課税売上高や課税売上割合によって、事業者ごとに毎回判定します。
仕入控除税額に助成金が含まれることの問題点
具体例でご説明します。
【例】
・事業用の資産を330円(うち30円は消費税)で購入した
・上記の資産について、助成金の申請を行った
・助成率が3分の2であったため、220円の助成金を受け取った
この事業者が、支払った消費税全額を仕入控除税額にできると仮定しましょう。
上記の330円と220円の2つの取引で消費税の納税額を考えたとき、この事業者は、「0円-30円」で30円の還付を受けることができます。
なぜなら、220円の助成金の受け取りは「不課税」ですので、消費税を受け取ったことにならないからです。
しかし、30円の還付のうち20円は、助成金と重複しています。
この事業者は消費税20円を助成金としてもらった上に、それにあたる額を税務署から還付された「二重取り状態」になっているのです。
わかりづらい場合は、助成金をもらっていないときの負担から考えてみましょう。
この事業者は、330円の課税仕入を行い、30円の還付を受けます。
したがって、実質負担は、もともと300円です。
それなら、本来、助成金は200円が妥当です。
しかし、受け取ったのは220円ですから、20円が重複しているという話になります。
そこで、事業者から助成金の支給団体に20円を返還すれば、この重複状態を解消することができます。
助成金の返還方法
仕入控除税額の報告を行う
助成金の返還は、消費税の確定申告の時、つまり仕入控除税額が確定したタイミングで、事業者から助成金の支給団体に報告を行います。
報告の方法は、助成金ごとに異なります。
一般的な方法は、交付要領に定められた専用の報告様式を作成して提出するというものです。
事務局のホームページ等から、交付要領等を検索してみましょう。
もし、「補助金に係る消費税等に係る仕入控除税額が確定した場合には速やかに◯◯に報告しなければならない」のような記載があるときは、たとえ返還額が0円でも報告する必要があるので注意してください。
返還額が0円になるケース
仕入控除税額に助成金としてもらった金額が含まれていなければ、返還額は0円です。
0円になるケースは、主に以下のものがあります。
・免税事業者・簡易課税選択事業者である場合
・助成金の対象となる支払いがそもそも不課税・非課税の場合(例:給与など)
・公募要領などによって、最初から申請額に消費税を含めないルールになっている場合
一番下の例として、補助金ではありますが、経済産業省の事業再構築補助金やものづくり補助金などがこのルールになっています。