令和2年度改正 低利用土地等の譲渡に100万円の特別控除を創設
2020.04.24
税務トピックス
相続・資産税
令和2年度税制改正において、低未利用土地等の譲渡に100万円の特別控除が創設されます。
本来の利用価値が十分に発揮できていないと認められる土地の売却を、活用意欲のある人に
譲り渡すことを税制面からサポートし、地域の活性化などに役立てることがねらいです。
以下のような土地をお持ちの方にとっては、検討価値があるといえます。
・相続したまま放置している田舎の土地
・使うのをやめた後、処分が面倒で放置している土地
・売ろうとしたことはあるけれど、税金の負担を聞いてやめてしまった土地
低未利用土地とは、
・長い間、利用されていない土地
・周辺状況からみて利用の程度が低い土地
をいいます。
低未利用土地は売りにくい!
低未利用土地は、
・一般的に売却価格が低い
・譲渡費用(例:古い家屋の撤去費用など)の負担が重い
・譲渡益への課税が重い
といった理由から、持ち主に放置されやすくなります。
特に、不動産の売却で気をつけておきたいのは譲渡益への課税です。
「高く売れない土地を売って、利益がでることがあるの?」と不思議に思われるかも
しれませんが、古い土地で、取得費が判明しないケースでは注意が必要です。
まず、不動産を売却したときの譲渡益は、次の方法で計算します。
【不動産の譲渡益】
収入金額 – (取得費 + 譲渡費用)
譲渡益が発生するケースには、土地の値段が購入時よりも上がっている場合のほか、
「取得費がわからない場合」があります。
「買った時期が古すぎて、いくらで購入したかわからない」といった状況です。
この場合、売却収入の5%を計算上の取得費とすることができます。
しかし、そうすると仮に譲渡費用が0円だった場合、売却収入の95%が譲渡益になってしまう
というわけです。
ではそれにいくら税金がかかるかというと、不動産を所有している期間で税率が2種類に
分かれます。
所有している期間とその税率は、売却した年の1月1日を基準に、次のように変わります。
1月1日時点の所有期間 | 所得税等 | 住民税 | 合計 |
5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
取得費や譲渡費用にあたるものについては、こちらの記事で解説しています。
https://www.m-ogido.com/tax_topics/income_tax/589/
今回の税制改正では、低未利用土地が放置されやすい理由の1つ「譲渡益への課税」について対策したものです。
具体的には、一定の要件を満たせば、譲渡益から100万円の控除が受けられるというものになります。
たとえば土地の売却代金が300万円で、取得費が15万円、譲渡費用が200万円だった場合、通常であれば譲渡益は85万円です。
これに上記の税金がかかりますので、手取りはさらに減ります。
しかし、今回の税制改正による特別控除を適用することができれば、この土地の譲渡益は0円です。(譲渡益が100万円に満たない場合は、譲渡益の額が上限になります)
85万円から税金を引かれることはありません。
いつ売却しても同じような手間やコストがかかるのであれば、税負担が低いうちに売却した方がメリットがありますし、その後の固定資産税等の負担もなくなります。
改正では、低未利用土地の放置を減らすことによって、土地の有効活用を通じた地域の活性化や、放置され続けることによって発生する所有者不明の土地を増やさないようにすることが期待されています。
500万円以下の譲渡であること
特別控除の対象となるのは、500万円以下の譲渡です。
このとき、低未利用土地の上に建物等がある場合は、その譲渡も含めて500万円以下に
なるかを判定します。
5年超の所有期間があること
その年1月1日において所有期間が5年を超える譲渡に限られます。
つまり、上記の20.315%の課税対象になる譲渡所得(「長期譲渡所得」といいます)が、
特別控除の対象です。
都市計画区域内にあること
特別控除の対象となる土地は、都市計画区域内にある土地に限られます。
市区町村の確認があること
特別控除を受けるには、その土地が低未利用土地であったこと及び譲渡後の土地の利用について、
市区町村の確認が行われることが必要です。
つまり、譲渡前の持ち主の利用状況と、譲渡後の新しい持ち主の利用状況を市区町村が
確認したものだけが、控除の対象になります。
確認を受ける方法については、今後、詳細な手順が発表されるものと考えられます。
特別控除が開始するのは、
・土地基本法等の一部を改正する法律(仮称)の施行の日
・令和2年7月1日
のいずれか遅い日から開始される予定です。
なお、開始から令和4年 12 月 31 日までの間に行われた譲渡が対象となります。