「教育資金の一括贈与の非課税」の特例と令和元年度の改正点

2019.11.22

税務トピックス

相続・資産税

教育資金の一括贈与の非課税特例とは

教育資金の一括贈与の非課税特例とは、贈与税の非課税の特例です。

内容は、直系尊属から贈与された「教育資金」が「1,500万円まで」非課税で受け取れるというものになります。

直系尊属とは、実の親や祖父母などです。

通常、親が子に支払う教育費のうち、「必要な都度」支払われるものは贈与税の対象になりませんので、この制度は、祖父母から孫への贈与に活用されやすい制度になります。

もし「必要な都度」ではなく「一括で」贈与したいという事情があれば、お子さんへの贈与にも活路はあるでしょう。

 

教育資金とは

ここでいう教育資金とは、学校等に支払われるもののほか、学校等以外の活動に支払われるものも含まれます。

学校等以外に支払われるものは、主に次のような費用です。

 

<学校等以外に支払われる金銭>

・教育に関する費用や施設の利用料

・スポーツや文化芸術など習い事の費用

・上記に使用する物品の購入費用

・「学用品の購入費や修学旅行費など学校教育に伴う費用」のうち、その全部又は大部分を学生等が支払うべきものと学校等が認めたもの

など

 

学校や学校以外に支払われる教育に関連する費用であれば、トータルで1,500万円以下であれば、贈与税が非課税になります。

ただし、学校等以外のものについては、社会通念上相当と認められる支出に限られ、非課税額の上限は500万円になります。

なお、贈与の額は受け取る人(孫など)を中心に考えるので、たとえば祖父から1,000万円、祖母からも1,000万円の贈与があれば、贈与された額は2,000万円ですので、非課税額をオーバーした部分には適用されません。

 

一括贈与のしくみ

教育資金を一括贈与するしくみは、まず金融機関が「教育資金管理契約」によって金銭をあらかじめ預かって管理し、お孫さんなどが使用するタイミングで、その金融機関等から金銭の払い出しが行われるしくみです。

銀行、証券会社、信託銀行によって構造の違いはありますが、いずれにしても、金融機関による手続きが必要になります。

お孫さんが未成年者の場合は、親権者が代理人で手続きを行います。

 

教育資金の一括贈与の活用メリット

教育資金の一括贈与を活用するメリットは、相続税対策にあります。

もし1,500万円をお孫さんに非課税で贈与できれば、相続財産が1,500万円減少し、その分、お子さんなど相続人が支払う相続税が安くなります。

 

活用しなかったときの贈与税は366万円!

通常、人からお金や物の贈与を受けると、1年間に受け取った額が110万円を超える部分について贈与税がかかります。

もし小さなお孫さんに、通常の方法で1年間に1,500万円の贈与を行った場合、お孫さんに課される贈与税は、366万円(※)です。

1,500万円渡したつもりが、実際にお孫さんの手に渡るのは約1,100万円になってしまいます。

(※)(1,500万円-110万円)×40%-190万円=366万円

 

令和元年度の改正

令和元年度に、この制度に4つの改正が行われました。

<改正点>

・贈与を受ける人の所得制限

・23歳以上の教育資金についての用途の制限

・死亡前3年の贈与に対する課税措置の追加

・教育資金口座の契約終了事由の見直し

 

贈与を受ける人の所得制限

贈与を受ける人(孫など)に所得の制限が加わりました。

前年の所得が1,000万円を超えるお孫さんに教育資金の贈与を行っても、非課税の適用はありません。

 

23歳以上の教育資金についての用途の制限

改正によって、贈与を受ける人が23歳に達した場合、「学校等以外に支払われる金銭」の

・教育に関する費用や施設の利用料

・スポーツや文化芸術など習い事の費用

・上記に使用する物品の購入費用

のうち、2019年7月1日以降に支払われるものについては、無条件に非課税になりません。

この3つについては、国の雇用対策である「教育訓練給付金」の対象費用のみが非課税の対象です。

 

死亡前3年の贈与に対する課税措置の追加

2019年4月以降に祖父母などから贈与が行われた後3年のうちに、その方が亡くなってしまった場合、その贈与は、相続税の対象になるというルールが追加されました。

 

教育資金口座の契約終了事由の見直し

贈与を受けた人が30歳になると、金融機関との契約が終了し、使いきれなかった残金等に贈与税が課されます。

改正では、30歳になっても

・学校等に在学している

・教育訓練を受けている

方であれば、その旨を金融機関に届け出ることで最長40歳まで利用できるようになりました。

 

まとめ

改正によって、多くの方が注意しなければならないのは、「死亡前3年の贈与に対する課税措置の追加」です。

これによって直前の相続税対策には使いづらいものとなりました。

ただ、教育資金の一括贈与のほかにも、相続税対策はあります。

生前贈与は、どの方法が一番、贈与する側・される側にあっているか見極めて選ぶことが大切です。

教育資金の一括贈与にご興味のある方、生前贈与や相続税対策をご検討されている方は、ぜひご相談ください。