遺産相続の手続きは何から始めればいい?期限や方法を解説
2019.08.17
税務トピックス
相続・資産税
遺産相続の手続きとは
遺産相続の手続きの一般的な流れは、次のようになります。
・法定相続人と財産の調査・相続放棄、限定承認の判断
・準確定申告・納税
・遺産分割
・相続税の申告・納税
そしてこのうち、次の手続きには期限が設けられています。
・相続放棄、限定承認の判断…相続の開始を知ったときから3ヶ月以内
・準確定申告・納税…相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内
・相続税の申告・納税…相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
遺産相続の手続きは、各手続きの期限をクリアしながら、相続税の申告・納税に間に合うよう進めていくことが一般的となります。
法定相続人と財産の調査
相続が開始したときの最も大切な手続きが、
法定相続人の調査と被相続人(亡くなった方)の財産の調査です。
法定相続人の調査では、被相続人の出生から死亡までの戸籍を確認し、
法律上の相続権をもつ人を特定します。
相続税の対象になる財産は、被相続人が死亡時に所有するものだけでなく、
相続税の対象となる過去の一定の贈与やみなし相続財産なども含まれます。
相続放棄と限定承認
相続といえば、財産を受け取るというプラスのイメージがありますが、
法律では、被相続人の財産だけでなく、被相続人の債務(借金など)も承継します。
もし、財産額よりも債務の額の方が多ければ、
その超過分は、相続人個人の財産から支払うこととなります。
相続にはこうした怖い一面もあるのです。
家族も知らない大きな借金があって、それを知らずに相続してしまった場合、
相続人の生活が困窮してしまう可能性もあります。
こうした事態を回避する手続きが、相続放棄や限定承認です。
相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てることにより、
次のような効果を生じます。
・相続放棄・・・財産と債務の全てを相続しない(相続人ではなくなる)
・限定承認・・・相続によって得た財産額を限度に、債務を相続する
相続放棄は、相続人単独でも手続きできますが、
限定承認は、相続人全員で行わなければなりません。
もし、3ヶ月以内に相続放棄や限定承認を行うべきかどうか判断がつかない事情があるときは、その期限を伸長する手続きも、同じく家庭裁判所に申し立てることが可能です。
準確定申告・納税
準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得を、
相続人が代わりに税務署に確定申告することです。
申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内で、
申告とともに所得税の納税も行わなければなりません。
準確定申告が必要となるのは、被相続人の所得が、通常の確定申告が必要となる要件に該当する場合です。
たとえば、個人事業を営んでいる人、年金収入が400万円を超える人、給与所得者であれば給与所得と退職所得以外の所得が合計20万円を超える人などが該当しますが、これ以外にも確定申告が必要となるケースがあるため、申告漏れのないよう注意が必要です。
なお所得税の還付金が発生したときは、その還付金は相続財産に含まれます。
遺産分割
遺言書がある場合や遺言書に指定のない相続財産がある場合は、遺産分割を行い、誰が何を相続するかを決定します。
小さな感情の行き違いが、大きなもめごとに発展することもあり、
相続の中で最もデリケートな部分です。
また遺産分割の方法で、発生する相続税の額が変わったり、納税が難しくなったりするケースがあったりするため、こうした事情に配慮しながら、全員が納得しやすい相続の形を見つけなければなりません。
遺産分割の結果は、相続人全員で作成した遺産分割協議書を作成することが一般的です。
相続税の申告・納税
相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、
被相続人の住所地を管轄する税務署に行います。
相続税の申告書は、多くの方が初めて目にする書類であることや、財産評価や税計算の仕組みが非常に複雑であることから、作成の労力は非常に大きいものとなります。
なお、相続税の納税については、期限内に金銭で一括納付することが原則です。
ただし、困難な事情が認められる一定のケースにおいて、延納(相続税を分割払いする制度)や物納(相続財産を納めることで納税とする制度)を利用することもできます。
遺産相続の手続きは何から始めればいい?期限や方法を解説 まとめ
遺産相続の手続きは、専門的知識を必要とする場面や、遺産分割については、他の相続人の感情に配慮した対応も求められます。
また、遺産相続のみの手続きであればおおまかに上記のようなものですが、現実には、遺産相続にかかる手続きだけでなく、市役所への届出や社会保険の手続き、葬儀や法要の手配、相続した財産の名義変更などさまざまな手続きを同時進行で行うこととなります。
相続に関する手続きは、税理士に相談しましょう。