1月からスタートする、改正電子取引制度
2022.02.25
税務トピックス
所得税
多くの人に影響する改正電子取引制度の概要
改正された電子帳簿保存法
所得税法や法人税法によって保存が義務付けられている一定の帳簿や書類を、書面ではなく、電子データで保存するには、電子帳簿保存法に定められた方法で行う必要があります。
コンピュータで作成した帳簿や書類であれば「電子帳簿保存」の要件を、紙の書類であれば「スキャナ保存」の要件を、そして、相手とデータで情報のやり取りをして行う「電子取引」であれば「取引情報の保存」の要件を、それぞれ満たさなければなりません。
令和4年1月1日以降、それぞれの保存要件が改正されましたが、そのうち、電子取引に関する改正内容は、多くの事業者に関係するものになっています。
電子帳簿保存法とは
取引情報の授受を電磁的方法により行う取引のことです。
【例】
・EDI取引
・インターネット等による取引
・電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによるやり取りを含む)
・インターネット上に設けたサイトを通じて取引情報を授受する取引
取引情報とは
取引情報とは、電子取引で受け取ったり相手に交付したりする、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。
電子取引制度の改正点
改正点①:書面による保存措置の廃止(経過措置あり)
改正前は、取引情報を書面出力して保存することも認められていましたが、令和4年1月1日以降は、取引情報を電子データで保存することが義務付けられます。
改正の対象者は、所得税法や法人税法によって、一定書類の保存義務がある事業者です。
ただし、経過措置として、令和5年12月31日までは、データをプリントアウトし、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば、従前どおりの書面保存も認められます。
言い換えれば、令和6年までに、電子取引の保存要件(次項参照)を充足する環境を整える必要があるということです。
改正点②:保存要件の一部緩和
改正によって、取引情報の保存要件が一部緩和されました。
改正後の保存要件は、国税庁のパンフレットがわかりやすいです。
下線部分が、今回の改正で緩和された部分になります。
(出典)国税庁パンフレット:電子帳簿保存法が改正されました(令和3年12月改訂)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/08.htm
★
真実性の要件とは、取引情報の改ざん防止を目的とする要件です。
②の下線部は、取引情報の授受後にタイムスタンプの付与期限を緩和するための改正で、「速やかに」とは「おおむね7営業日以内」、「その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに」とは「最長で2か月と、おおむね7営業日以内」を指します。
検索機能の確保(可視性の要件)
可視性の要件とは、保存された取引情報を、後の税務調査等で確認できる状態にするための要件になります。
改正点は、一部の事業者の検索要件(下記の①~③)が緩和された点です。
【改正後の検索要件】
①取引年月日、取引金額、取引先により検索ができる
②日付または金額の範囲指定により検索ができる
③2つ以上の項目を組み合わせた条件検索ができる
もし、税務職員による質問検索権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合、②と③の機能の確保は不要になります。
さらにそのうち、その電子取引の前々事業年度(個人事業主は前々年)における売上高が1,000万円以下の小規模な事業者であれば、①~③のすべての機能の確保が不要となります。
検索要件 | 原則 | ダウンロードの求めに応じる | |
右以外 | 小規模な事業者 | ||
① | 〇 | 〇 | 不要 |
② | 〇 | 不要 | 不要 |
③ | 〇 | 不要 | 不要 |
改正点③:重加算税の10%加重措置
電子取引に関して、取引情報を仮装・隠蔽することで税額をごまかした場合、その税額に課される重加算税の割合が、通常よりも10%増加します。
つまり、この場合の重加算税は下記のようになります。
・過少申告加算税の対象に、仮装隠蔽があった場合
→通常35%+加算10%
・無申告加算税の対象に、仮装隠蔽があった場合
→通常40%+加算10%
電子取引に関するデータ保存の準備をしよう
改正後、電子取引でやり取りした取引情報は、データで保存しなければ、所得税法や法人税法の書類の保存要件を満たすことができません。
保存要件を満たしていなければ、最悪の場合、青色申告の承認が取り消される可能性もあります。
そのため、令和5年12月31日までの期間中、保存要件を充足できる環境を整える必要があります。
電子帳簿保存などの導入で不安な点があれば、税理士等にご相談ください。