軽減税率の請求書、区分経理、区分記載のこと
2020.01.24
税務トピックス
消費税
2019年10月1日以降、標準税率が10%にアップすると同時に、食品など一定の資産の譲渡について8%の軽減税率が導入されています。
このことによって課税事業者は、消費税を正しく納税するために、
・複数税率による区分経理
・区分記載による帳簿・請求書等の保存
を行わなければなりません。
区分経理とは、8%と10%の税率の取引を、税率ごとにレジや販売管理システム、帳簿上で区分して経理することです。
軽減税率対象商品を販売する事業はもちろん、それ以外の事業であっても、たとえば会議費などで処理するお茶やお弁当代などは、軽減税率8%の課税仕入で経理をしなければならず、多くの事業が影響を受けます。
軽減税率対象商品については、こちらの記事をご覧ください。
「2019年10月から始まる軽減税率とは 対象商品や事業者への影響を解説」
https://www.m-ogido.com/tax_topics/consumption_tax/158/
区分経理にすぐに対応することが難しい中小事業者(基準期間における課税売上高が5,000万円以下)については、売上げや仕入れのうち、一定割合を軽減税率の対象取引として、簡便に税額を計算することが認められます。
軽減税率の対象取引とする一定割合については、計算方法がありますので、適用したい事業者は、早めに税理士等に相談しましょう。
これにより、1つ1つの取引を区分する必要はなくなります。
ただし暫定的な措置であること、さらに売上げと仕入れで適用期間が異なることに注意が必要です。
【区分経理の中小事業者の特例期間】
売上 | 2023年9月30日までの期間 |
仕入 | 2020年9月30日の属する課税期間の末日まで |
また、消費税の簡易課税制度についても、通常であれば「課税期間が始まる前」に「消費税簡易課税制度選択届出書」提出しなければ適用することはできませんが、上記の仕入れの特例期間中であれば、適用を受けたい「課税期間の末日まで」に提出すれば、適用することが特別に認められます。
ただし簡易課税制度は、大きな設備投資の予定がある事業には向かず、2年間継続しなければ辞めることができないため、こうした予定がある事業者の方は、適用することの適否を税理士に相談するとよいでしょう。
課税事業者にとって影響が大きいのは、新ルールとなる「区分記載請求書等保存方式」による帳簿と請求書等の保存です。
2019年10月以降はこの新ルールに基づいて帳簿と請求書等の保存を行わなければ、それにかかる仕入税額控除が受けられなくなり、一般課税で申告する際の消費税の納税額が増えてしまう可能性があります。
さらにこの新ルールについても、4年後に内容が再び変わります。
それが2023年10月から始まる「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」です。
ややこしいのですが、「区分記載請求書等保存方式」と「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」では、それぞれ、保存する帳簿や請求書の要件が下記のように変わります。
区分記載請求書 (令和元年10月~令和5年9月末) |
適格請求書方式 (令和5年10月~) |
|
請求書等の記載要件 | ・作成者の氏名又は名称 ・取引を行った年月日 ・取引の内容 (軽減税率の対象取引であれば、その内容及び軽減税率の対象である旨) ・税率ごとに合計した取引の対価の額(税込価格) ・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称 |
・作成者の氏名又は名称 ・適格請求書発行事業者の名称・登録番号 ・取引を行った年月日 ・取引の内容 (軽減税率の対象取引であれば、その内容及び軽減税率の対象である旨) ・税率ごとに合計した対価の額(税抜きor税込み)及び適用税率 ・税率ごとに合計した消費税額 ・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称 |
帳簿の記載要件 | ・課税仕入れの相手方の氏名又は名称 ・課税仕入れを行った年月日 ・課税仕入れの内容 (軽減税率の対象取引であれば、その内容及び軽減税率の対象である旨) ・課税仕入れに係るの支払対価の額 |
左に同じ |
(下線部は、従前の制度との違い)
なお「区分記載請求書等保存方式」については、3万円未満の取引について請求書等の保存がなくても控除を受けることができます。
「区分記載請求書等保存方式」については、こちらの記事もご覧ください。
「2019年10月から始まる区分記載請求書等保存方式で仕入税額控除はどう変わるか」
https://www.m-ogido.com/tax_topics/consumption_tax/322/
これに対し、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」に、この制度はありません。
また、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」に基づく請求書等を発行するには、適格請求書発行事業者の登録が必要となります。
登録は税務署への申請が必要で、令和3年10月から登録申請の受付が開始されるスケジュールとなっています。(インボイス制度の適用を令和5年10月から受けるには、原則、令和5年3月31日までに登録が必要になる予定です。)