消費税の「総額表示」とは?
2021.06.11
税務トピックス
消費税
令和3年4月、「消費税転嫁対策特別措置法」による特例が失効し、
消費税の「総額表示」のルールが復活しました。
消費税の総額表示とは
消費者に支払価格を誤認させないために、課税事業者には、
店頭などで表示する価格を「総額表示」にしなければならないという
消費税法上の義務があります。
「総額表示」とは、簡単にいうと、税込みの価格を表示することです。
令和3年3月で失効した特例
消費税は、平成26年4月に5%→8%、令和元年10月に8%→10%と、
比較的短い期間で変化しました。
しかし、消費税が変わる度に値札を貼り替えることは、業種によってはかなり大変です。
そこで、平成25年10月1日から令和3年3月31日までの間、「消費税転嫁対策特別措置法」が
施行され、税込み価格であると誤認されないよう措置を講じているときに限り、
総額表示をしなくてよいこととされていました。
この適用期間が、今年の3月で終了したことにより、
現在は、総額表示の義務が復活している状態なのです。
消費税の総額表示の対象になる事業者や価格とは
総額表示の具体的な内容については、
①不特定多数の相手に商品やサービスを提供する事業者が、
②価格をあらかじめ表示するとき、③消費税を含めた価格を表示すること、
とされています。(消費税法第63条)
不特定多数の相手に商品やサービスを提供する事業者
消費税の総額表示の義務があるのは、小売業のように、
不特定多数の消費者に対して価格を表示する事業者です。
ただし、会員制の店でも、会員の募集が不特定多数の人を対象にしていれば、
総額表示の必要があります。
なお、事業者同士の取引(BtoB)であるときは対象外となります。
たとえ不特定多数に対する価格表示でも、それが専ら事業者に対する商品や
サービスの提供であれば、総額表示の対象になりません。
たとえば、建設機械の展示販売、事業用資産のメンテナンスのようなケースが
これにあたります。
価格をあらかじめ表示するとき
総額表示の対象になる価格は、消費者に、あらかじめ価格を表示する場合に限られます。
表示の媒体には、特に制限がありません。
したがって、下記のようなものであらかじめ価格を表示する場合、
すべて総額表示の対象になります。
【総額表示の対象となる表示媒体】
・値札、商品陳列棚、店内表示
・商品、容器、包装による価格の表示
・チラシ、パンフレット、商品カタログ、説明書面
・ポスター、看板、ネオン・サイン、アドバルーン
・プラカード、建物、電車、自動車
・新聞、雑誌その他の出版物、放送、映写又は電光
・ホームページ、ダイレクトメール、FAX
また、消費者が支払う価格そのものではない、商品の単価や手数料なども、
総額表示の対象になります。
なお、普段から価格を表示していない場合は、総額表示の対象になりません。
価格表示をしていないものに、価格の表示を義務付けるためのものではないからです。
見積書、契約書、請求書等は、あらかじめ価格を示すものでないため、
総額表示の対象になりません。
消費税を含めた価格を表示すること
上記にあたる事業者には、総額表示の義務があります。
この場合、価格を税込みで表示することが求められます。
【総額表示の例】
本体価格1万円、消費税等1,000円の商品の価格を表示する場合
・11,000円
・11,000円(税込)
・11,000円(税抜価格10,000円)
・11,000円(うち消費税額等1,000円)
・11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
・10,000円(税込11,000円)
消費税を含めた総額を、必ず表示しなければなりません。
総額が明らかであれば、税抜価格を表示していても構いません。(一番下の例参照)
(参考)国税庁:タックスアンサーNo.6902
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6902.htm