スキャナ保存のタイムスタンプとは?不要となる条件も解説
2022.09.09
税務トピックス
スキャナ保存の要件の一つに「タイムスタンプの付与」があります。
この記事では、令和4年1月1日以降にスキャナ保存を始める方に向けて、スキャナ保存におけるタイムスタンプ付与の要件を解説します。
タイムスタンプの付与以外に満たさなければならないスキャナ保存の要件は、こちらで解説しています。
そもそもタイムスタンプって何?
タイムスタンプとは、電子データに「時間」を刻印するデジタル技術です。
この技術を組み込んだソフトやアプリケーションを使用することによって、使用者は、TSA(時刻認証局)が発行する、保存データの「ハッシュ値」と「時刻情報」を組み合わせたタイムスタンプトークンを得ることができます。
このタイムスタンプトークンと保存データの情報を比較すれば、その時刻にそのデータが存在していたこと、その時刻からデータが改ざんされていないことをいつでも証明できるようになるのです。
電子帳簿保存法でなぜタイムスタンプが求められるのか
スキャナ保存や電子取引保存の対象書類にタイムスタンプを付与することは、その書類の真実性を確保することに繋がります。
「この書類は作成・受領したそのままの状態から、誰も改ざんしていませんよ」という言葉を信じてもらいやすくなるということです。
たとえば、法人税の申告書を作っているときに「今期は収入が多いから、数字をもっと減らそう」と考えて、こっそり書類の数字を改ざんしてデータを保存し直した人がいたとします。
(もちろん脱税です!)
しかし、その会社で普段から作成・受領した書類に対して一定のタイミングでタイムスタンプを付与していれば、後から改ざんしたデータが当初に作成・受領したものでないことはすぐにわかります。
社内にこうしたタイムスタンプ付与のしくみが存在することが、スキャナ保存や電子取引保存をした書類に対する不正の抑止になるというわけです。
スキャナ保存のタイムスタンプ付与要件とは
スキャナ保存では、書類を作成・受領してから一定期間内にタイムスタンプを付与することが求められます。
この期間は、スキャナ保存する書類が重要書類・一般書類のどちらに該当するかによって変わります。
重要書類のタイムスタンプ付与の期限
重要書類は受領・作成から「最長2カ月と概ね7営業日以内」に書類の記録項目を入力しなければならず、タイムスタンプについてもこの期間内に付与することが求められます。
(出典)国税庁パンフレット:「電子帳簿保存法が改正されました」より一部抜粋
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/08.htm
(参考)最長2カ月と概ね7営業日以内ってどういうこと?
「最長2か月と概ね7営業日以内」とは、本来の要件である「業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行う」という部分を、わかりやすく置き換えた表現です。
「通常の期間」とは、会社の業務処理サイクルの期間を指します。
この期間が「最長2か月以内」で、後半の「速やかに」が「おおむね7営業日以内」とされていることから、「最長2か月と概ね7営業日以内」という表現になるのです。
ただし「通常の期間」は企業ごとの業務処理サイクルの期間によって変わります。
もし会社が「20日間」で処理すると定めているのであれば、「最長2か月」の部分は「20日間」になります。
一般書類のタイムスタンプ付与の期限
一般書類には入力の期限が特になく、適時に入力すればよいこととされています。
タイムスタンプ付与についても「作成若しくは受領後、速やかに(※)」又は「書類をスキャナで読み取る際」に付与すればよいとされています。
(※)重要書類と同じく「最長2か月+概ね7営業日」を意味します。
タイムスタンプが不要になる条件
訂正削除履歴が残るシステムに保存する
訂正削除履歴が残るシステムやそもそも訂正削除ができないシステムにおいてデータを保存する場合は、タイムスタンプ付与の要件に代えることができます。
こうしたシステムであれば、タイムスタンプがなくても、いつ保存したのか確認できるからです。
国税庁の取扱い通達4-28では、例として「他者が提供するSaaS型のクラウドサービスが稼働するサーバがNTPサーバ(ネットワーク上で現在時刻を配信するためのサーバ)と同期しており、かつ、スキャナデータが保存された時刻の記録及びその時刻が変更されていないことを確認できるなど、客観的にそのデータ保存の正確性を担保することができる場合」がこれにあたるとしています。
注意:自社システムへの保存はタイムスタンプが必要
国税庁は、前項のようなシステムであっても、それが自社システムである場合は、タイムスタンプの代わりにはならないとしています。
理由は、保存された時刻の記録についての非改ざん性を完全に証明することができないからです。
したがって自社システムに保存する場合は、原則、タイムスタンプの付与が必要になります。
次回も引き続き電子帳簿保存法について解説いたします。
電子帳簿保存などの導入で不安な点があれば、税理士等にご相談ください。