2019年施行の中小企業に関する税制改正

2019.11.09

法改正情報

税制改正は、私たちの生活に大きな影響を与えます。

しかしいずれも重要なのは、その改正が「いつ」スタートするのか…つまり「施行日」です。

税制改正は、改正された年度と施行される年が必ずしも一致しません。

改正が発表されたときは話題になったのに、施行されるころにはすっかり忘れられていることもあります。

今回は、2019年内に施行日を迎えた税制改正のうち、中小企業に関係のある改正内容をまとめます。

 

 

2019年施行の税制改正一覧

 

改正内容 税金の種類 施工日 終了日
個人版事業承継税制 相続税・贈与税 2019年1月1日~ 2028年12月31日
中小企業投資促進税制 法人税・所得税等 2019年4月1日~ 2021年3月31日
中小企業経営強化税制 法人税・所得税等 2019年4月1日~ 2021年3月31日
商業・サービス業・農林水産業活性化税制 法人税・所得税等 2019年4月1日~ 2021年3月31日
研究開発税制 法人税・所得税等 2019年4月1日~ 2021年3月31日
区分請求書等記載方式 消費税等 2019年10月1日~ 2023年9月30日

 

個人版事業承継税制

個人の事業承継は、個人から個人への事業用資産の移転によって行われます。

個人版事業承継税制とは、この移転にかかる後継者の相続税・贈与税を猶予、免除する措置です。

法人版事業承継税制から、1年遅れて施行される形となりました。

制度自体は2028年まで有効ですが、税制措置を利用するには、令和6年(2024年3月31日)までに、都道府県知事から「個人事業承継計画」の確認を受ける必要があります。

 

中小企業投資促進税制

中小企業の設備投資を支援する、おなじみの税制の延長です。

機械装置(160万円以上)、ソフトウェア(70万円以上)、工具・器具備品(30万円以上)、建物付属設備(60万円以上)の設備の導入について、法人税・所得税等の特別償却(30%)または税額控除(7%)の選択適用が認められます。

 

中小企業経営強化税制

中小企業等経営強化法による支援措置の一つで、こちらも延長措置になります。

同法の認定を受けた「経営力向上計画」に基づく設備投資に限って、法人税・所得税等の即時償却(100%)または税額控除(10%)の選択が認められます。

注意点としては、原則、経営力向上計画の認定を受けてから設備を取得するという流れになることです。(設備取得後に認定を受けることも可能ですが、スケジュールがタイトになるため注意が必要です。)

なお「生産性向上設備(A型)」と「収益力強化設備(B型)」のどちらの設備で認定を受けるかによって、異なる部分があるため注意しましょう。

 

商業・サービス業・農林水産業活性化税制

商業・サービス業・農林水産業を営む中小企業について、その生産性を向上させる設備投資や、働き方改革に関係する設備投資を支援する税制です。

建物付属設備(60万円以上)、器具・備品(30万円以上)の取得について、法人税・所得税等の特別償却(30%)または税額控除(7%)の選択適用が認められます。

 

研究開発税制

中小企業の試験研究費に対する支援の延長措置です。

通常は、試験研究費の12%に相当する額の税額控除を受けられる制度ですが、2021年3月末まで、試験研究費の増加割合に応じて、法人税・所得税等の最大17%(通常のプラス5%)まで税額控除を受けることができます。

大企業も受けることができますが、税額控除の率は下がります。

 

区分請求書等記載方式

2019年10月から消費税率が10%に改正され、同時に軽減税率8%が導入されました。

さらに2種類の税率が混在する状況から、消費税課税事業者の「仕入税額控除」の要件が、「区分請求等保存方式」(2019年10月1日~2023年9月30日)に変わっています。

区分請求書等保存方式については、こちらの記事もご覧ください。

 

「2019年10月から始まる区分記載請求書等保存方式で仕入税額控除はどう変わるか」

https://www.m-ogido.com/tax_topics/consumption_tax/322/

 

まとめ

2019年施行の税制改正のうち、中小企業に重要なものをまとめました。

中小企業の優遇税制は、軒並み延長となりましたが、いずれにしても適用には細かい要件があります。

ご興味のある税制がございましたら、ぜひご相談ください。