生命保険を活用して相続税を非課税にする方法
2019.06.28
税務トピックス
相続・資産税
生命保険はみなし相続財産として課税対象になる
相続とは被相続人(亡くなられた方)の財産を承継することですが、相続税の対象となる財産は、被相続人が亡くなった時に保有する財産だけではありません。
被相続人の死亡保険金も、相続税の対象となる財産の1つです。
死亡保険金は、生命保険会社から支払われるものであって、被相続人の固有の財産ではありません。
しかし被相続人が生前にその保険料を負担していた生命保険については、相続税の対象となる「みなし相続財産」に該当します。
生命保険が相続税対策になるしくみ
なぜ相続税の対象となる財産が相続税対策になるかというと、死亡保険金は、遺族の生活保障のために支給されるものであって、その全額を課税対象とすることがふさわしくないという観点から、一定の非課税額が設けられているためです。
相続人が受け取った死亡保険金の合計額が、非課税限度額内であれば、死亡保険金は相続税の対象になりません。
死亡保険金の非課税限度額
死亡保険金の非課税限度額は、次のとおりです。
500万円×法定相続人の数(※)
(※)法律上の相続権をもつ人。配偶者や子など、被相続人と一定の親族関係にある人。
死亡保険金を受け取った相続人が複数いる場合、非課税限度額は、受け取った保険金額に比例して配分されます。なお死亡保険金の額が限度額を超える場合、限度額を超えた分が相続税の課税対象になります。
生命保険で相続税を非課税にするには
相続税は、相続税の対象となる財産の総額から、基礎控除額を差し引いた額にかかります。
基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
一方、死亡保険金は、その非課税限度額までは、相続税の対象となる財産に計上されません。
このことから、基礎控除額を超える分の現金を使って生命保険に加入することで、相続税を非課税としながら、遺族に十分な財産を遺すことができるようになります。
生命保険で相続税を非課税にする具体例
例えば、相続財産が現金6,000万円となる相続があったとします。
法定相続人は長男、次男、長女の3人で、取得した財産は2,000万円ずつとします。
【例】
・長男…2,000万円
・次男…2,000万円
・長女…2,000万円
まずは、この例で相続税額を計算します。
相続税額の計算では、まず基礎控除額を差し引いた後の財産額を計算します。
例の場合、1,200万円(※1)です。
この1,200万円から、法定相続分に応じる相続税額を計算(※2)し、その合計額を実際の相続分に応じて
配分します。
今回は、実際の相続分が均等ですので、長男、次男、長女が負担する相続税額は法定相続分のまま、
1人40万円(計120万円)となります。
(※1)6,000万円-基礎控除額(3,000万円+600万円×3人)=1,200万円
(※2)各人の法定相続分:400万円
相続税額:400万円×10%=40万円
それでは上記の例を踏まえて、生命保険を使った例を見ていきましょう。
基礎控除額を超える現金1,200万円を払込保険料とする生命保険(受取人:長男)に加入したとし,
死亡保険金は、払込保険料と同額が給付されたと仮定します。
この場合、各人が取得した財産は次のようになります。
【例】
・長男…現金800万円、死亡保険金1,200万円
・次男…現金2,000万円
・長女…現金2,000万円
死亡保険金の非課税限度額は、1,500万円(500万円×3人)ですので、長男が受け取った死亡保険金
1,200万円は、全額非課税となります。
その結果、相続税の対象となる財産の総額は、4,800万円です。
基礎控除額も4,800万円ですので、相続税はかかりません。
生命保険を活用する前の税負担は1人40万円でしたから、合計で120万円分、遺族が受け取れる財産が
増えていることになります。
生命保険を使った生前対策を
生命保険を使った生前対策は、現金資産の多い相続で特に大きな節税効果を発揮します。
また死亡保険金は、受取人の固有の財産となるため、遺産分割の対象になりません。
遺産分割の対象にならないことから、早期に受取人の財産とすることができ、相続が発生して間もないころの
資金調達手段としても有効です。
また、今回の例では、払込保険料の総額と給付された死亡保険金が同額という設定を使用しましたが、
生命保険は保険料の払込期間を短縮することで、払込保険料の総額を減らすことが可能です。
中には、将来受け取れる死亡保険金よりも少ない掛け金で払込みが完了する商品も存在します。
生命保険を使った相続税対策は、専門家に相談しましょう。