「中小企業倒産防止共済制度」を活用した節税対策

2019.06.14

税務トピックス

法人税

中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)の概要

取引先が倒産してしまい、売掛金の回収ができなくなってしまった場合、その取引相手の企業も経営難や倒産のリスクがあります。
中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)とは、取引先の企業が倒産した場合に、
中小企業基盤整備機構(以下:中小機構)から、それまで支払った掛け金の最高10倍(上限8,000万円)を、無担保、無保証で借り入れることができる制度です。
また取引先の倒産にかかわらず、臨時の事業資金が必要なときには、掛け金の一時貸付を利用することもできます。
一時貸付での借入上限額は、機構解約による解約手当金(※)の額の95%です.

※機構解約による解約手当金の額:掛金総額×75%~95%(掛金納付月数による)

 

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の節税のしくみ

 

中小企業倒産防止共済制度とは、有事の際の危機管理ができるほか、使い方によっては大きな節税効果があります。

掛け金の節税効果

中小企業倒産防止共済制度では、掛け金の全額を法人の損金・個人事業の必要経費に算入できるという節税メリットがあります。
月額掛け金は、5,000円から20万円まで、5,000円単位で選ぶことが可能ですので、最大で年240万円の掛け金を経費として計上できることとなります。

解約手当金の扱い

中小企業倒産防止共済に支払った掛け金は、800万円に達するまで積み立てることができます。
払い込んだ掛け金を適宜引き出すことはできませんが、掛金納付月数が12ヶ月以上であれば、解約することで掛け金総額の一定割合の額を返金してもらうことができます。
解約手当金として受け取れる割合は、解約の理由によって変わり、それぞれ次の割合で支給されます。

 

掛金納付月数 任意解約 みなし解約 機構解約
1ヶ月~11ヶ月 0% 0% 0%
12ヶ月~23ヶ月 80% 85% 75%
24ヶ月~29ヶ月 85% 90% 80%
30ヶ月~35ヶ月 90% 95% 85%
36ヶ月~39ヶ月 95% 100% 90%
40ヶ月以上 100% 100% 95%

 

<解約の理由>

・任意解約・・・下記の理由に該当しない解約

・みなし解約・・・事業主の死亡、法人の解散・分割などによる解約

・機構解約・・・掛け金の滞納や不正行為があったときの機構側からの解約

自身のタイミングで任意解約をした場合でも、掛け金納付月数が40ヶ月以上であれば、掛け金総額が戻ります。
ただしこの解約手当金は、個人の場合は事業所得に、法人の場合は益金に算入されます。
掛け金が全額損金となり、解約手当金が全額所得になるということは、所得の課税時期を先送りしているということになります。
つまり、掛け金による節税とは当座の節税であり、重要なのは解約手当金をいつ受け取るかという出口戦略になります。

 

中小企業倒産防止共済制度を活用した節税方法

 

法人の場合

経営が黒字のときは掛け金による節税を続け、万が一赤字に転じたときに、解約手当金を受け取ることで、負担税額を少なくすることができます。
また赤字でなくとも、退職者が出たとき、資産に大きな減損が生じたときなど、臨時的に大きな費用が発生するときに解約手当金を充てることでバランスをとってもよいでしょう。

個人の場合

個人事業主の場合、所得税率が5%~45%と幅があるため、所得税率の高いときに掛け金を支払い、低いときに解約手当金を受け取るという考え方が有効です。
特に個人事業では個人の所得控除も考慮できるため、家族が入院し医療費控除が多かった年などに解約すると、資金調達を行いながら、解約手当金に生じる税額を押さえることができます。

 

解約時を誤ると損をすることも

 

個人所得税は、所得の高額な部分ほど税率が高くなる超過累進税率が使われています。
このことから逆に、低い税率のときに掛け金を拠出し、高い税率がかかるときに解約すれば、節税額と負担税額で考えると損をしたことになります。
高い税率のとき(売上が順調なとき)に解約を考える必要性は高くありませんが、たとえば事業拡大などのシーンで解約金を活用しようとすると、こうしたデメリットが生じます。
法人でも一部の税は超過累進となっているため、個人ほど大きな税差は生じなくとも、損をする可能性はあります。

中小企業倒産防止共済制度は専門家に相談しよう

 

中小企業倒産防止共済制度は、課税のしくみを正しく認識して利用すれば、節税効果を得ることができます。
中小企業倒産防止共済制度の活用は、税理士に相談しましょう。